山形南陽のんのん倶楽部 代表取締役
主な特産物
さくらんぼ:佐藤錦 紅秀峰西洋梨:ラ・フランス、オーロラ ぶどう:デラウェア、シャインマスカット もも:あかつき、くにか、あぶくま、川中島 りんご:千秋、紅玉、ふじ
お客様へ
このメッセージを作るにあたって、私の「もの作りのこだわり」とは…はて、何だろう? ついつい、考え込んでしまいました。「一般的な形にできる『作りかた』ではない」「常に意識している思い……でも、固定化はされていない」いつも揺れ動いているが、底流に潜む思いではないだろうか…思いにふけってしまいました。
「自分の納得のいく”おいしい!”を作りたい」という強い思いがあります。むしろ、もうそれ以外ないという一種の使命感のようなものを感じながら、日々暮らしています。しかし、現実はそう甘くはありません。なかなか、納得のいく結果などはきませんし、「試行錯誤が続く日々。」というのが現実です。
さくらんぼ園は山の畑で長年作ってきました。熟期は遅れるものの色や身のしまり方、糖度や酸味など、栽培は納得のいくところに近づいていました。しかし、私も60歳近くなります。見た目は元気でも、炎天下や冬場の作業は心にも体にも堪えてきました。そのため、山の畑から平場に引っ越して、10年近くなります。山のようなさくらんぼを目指そうとはするものの、土質や気候では、山と平野では全く違います。「山の畑で作ったものよりも”おいしいもの”をつくりたい!」と思い、日々努力を重ねています。
また、シャインマスカットも作って5年になります。本格的な生産に入ってからは3年目の春です。 このシャインマスカットもまた、大きな悩みを抱えています。シャインマスカットは、おいしさの大切な要素に「糖度」「酸味」「食感」それにあの特有の香り「マスカット臭」が加わり、トータルでおいしさを実感することができると思います。
それぞれの要素が矛盾した関係をもっているため、おいしさのバランスが難題なのです。特に糖度と香りは反比例しているようで、科学的データなどありませんが「生産者の体験から」、糖度を上げて、熟度を増すとマスカット臭が失われていくように感じられます。指導指針では、糖度18度以上で収穫するように言われていますが…私は、糖度17~18度くらいが香りを感じる程度が良いと思っています。このマスカット臭は「皮ごと噛み砕いた時に感じる香り」のようで、皮ごと食べる時の違和感を少なくしたいと思っています。「糖度が増すと、皮が分厚くなる。皮をできるだけ薄く作りたい……」 そんなことを考えていると限りなく、疑問がわいてきます。
近年は生産者(のんのん倶楽部会員)の高齢化(平均年齢60歳前後)が進み、担い手が減少しています。「規模の維持」や「新規品目の開発」が難しくなる中で、私自身も規模の拡大と新規品目に挑戦するも、雇用労力に頼らざるを得ない現実がありますし、その雇用者の技術力を高めるという課題にも直面しています。さくらんぼの摘果作業ひとつとっても、「おいしものを作りたい」という思いを雇用者に伝えようとしてもなかなか伝わらなく、ましてや作業の結果と結びつかないのが現実です。
もうひとつ、大きな課題は「自然=天候」とどう向き合うかということです。これは、どの生産者も頭を抱えていると思いますが、近年、二年続きの赤字経営状況で、今年の結果次第では方針変更を強いられています。 その原因も自然災害という「天候」が大きく関わってきます。
2008年、桃の凍害がありました。1ha 6年生の若木の80%を枯らしてしまい、2010年・2011年とたて続けに豪雪害をうけ、50aのラ・フランス柵を崩壊させてしまいました。お天道様のせいにはできませんが、経営の基礎である大事な樹木を維持することの難しさを思い知らされた近年です。
2012年春、今年も低温で発芽が開花から1~2週間遅れるような状況です。7月のさくらんぼ収穫になりそうなので対策を打たなければと思っています。
「おいしいものを作りたい」と、必死に栽培しているのが現実で「私のこだわりは!」と他の生産者のみなさんとの違いを明確にいえないなんて勉強不足で、心苦しいですが、日々、勉強!「おいしい!」を追及して、お客さま笑顔を届けたいと思っています!
2011年度を振り返って「りんご」、「シャインマスカット」も掲載しています。昨年の品評や状況のほか、いろいろな面から見た考察を掲載しています。 お時間がありましたら、こちらも一緒に読んでみてください。